本記事は、連載『60歳からの欲張りすぎない起業術』の第3回です。
10年のサロン経営を経て、67歳で専門家としての武器を手にするまでの歩みを、キャリア理論で紐解きながら綴ります。
現在進行中のテーマ:
パート1:手放す勇気と、空白の価値(第1回〜4回) ← 今ここ!
パート2:偶然を「仕事」に変えるしなやかさ(第5回〜8回)
パート3:自分を使い切らない、新しい黄金比(第9回〜12回)
▶ 連載の一覧(目次・プロフィール)はこちら
予定より早まった帰国、手元に残ったものは?
ハノイでの生活は、予定では5年ほど続くはずでした。ところが、滞在から1年足らず。夫が「暑いからもう帰る」と言い出したのです。あまりに唐突な言葉に驚きましたが、実は私の中にもその言葉をどこか待っていたような感覚がありました。日本で暮らす高齢の義母や実両親のことが、ハノイの青空の下でもずっと心のどこかで気がかりだったのです。
「これもタイミングかもしれない」
そう自分を納得させて帰国したものの、私の手元には目に見える「次の仕事」も「新しい資格」もありませんでした。10年続けたサロンを閉め、海外でのんびり過ごした1年。社会から少し取り残されたような、心細さを感じていたのを覚えています。
そんな折、挨拶がてら以前所属していた団体に遊びに行きました。そこで耳にしたのは、「ホームページを作りたいけれど、なかなか進まなくて困っている」という悩みでした。
「もしよければ、私がお手伝いしましょうか?」
その一言が、私の新しいキャリアの扉をたたくことになったのです。
「頼める人がいてよかった」という信頼の価値
サロン時代、私は業者に頼まず、自分でホームページを作り、SNSを更新し、チラシやちょっとした看板まで手作りしていました。お客様が途切れた時の駅前でのチラシ配りや、夜な夜なのポスティング。当時は「経費削減のために自分でやるしかない」と必死でしたが、その時培った「どうすれば人に伝わるか」を試行錯誤した経験が、数年越しに思わぬ形で輝き始めました。
でも、それ以上に私を驚かせたのは、皆さんが「あなたなら安心して任せられる」と喜んでくださったことです。
ハノイにいた1年間、私は何も生み出していないと思っていました。けれど、帰国して温かく迎えられたとき、気づいたのです。私がサロンを営んでいた10年間で築いたものは、売上という数字だけではありませんでした。「あの人は一生懸命やってくれる」「あそこに頼めば間違いない」という、目に見えない「信頼」という名の資産が、しっかりと日本に残っていたのです。
「何者でもない自分」なんていない。役割の重なりが未来を作る(スーパー:ライフ・キャリア・レインボー)
キャリア学者のドナルド・E・スーパーは、人生におけるキャリアを、単なる「職業」ではなく、家庭人、市民、余暇を楽しむ人など、さまざまな「役割」の重なりとして捉える「ライフ・キャリア・レインボー」を提唱しました。
私のキャリアも、一つの役割だけでできているわけではありません。
- 高齢の両親の通院を支える「子供」としての役割
- 主婦として家庭を整える「家庭人」の役割
- 地域に生きる「市民」としての役割
- そして、裏方として誰かを支える「職業人」としての役割
これらが虹のように重なり合い、絶妙なバランスで成り立っています。かつての私なら「もっと仕事に専念しなきゃ」と焦ったかもしれません。でも今は、どの役割も自分にとって大切で、そのバランスこそが「私らしいキャリア」なのだと胸を張って言えます。
もし、あなたが今「誇れるキャリアがない」と立ち止まっているなら、一度これまでの人生を振り返ってみてください。あなたが誠実に向き合ってきた時間は、必ず誰かとの間に「信頼」を育てています。それは、どんな最新の資格よりも、あなたを助けてくれる強力な武器になるはずです。
あなたへ伝えたいメッセージ~目に見える「肩書き」よりも、積み上げてきた「誠実さ」を信じて
「再出発のために、何か新しいことを学ばなきゃ」と力んでいませんか?
もちろん学びは大切ですが、まずはあなたがこれまでに築いてきた「信頼の貯金」を確認してみてください。
昔の仕事仲間、趣味の集まり、あるいはご近所付き合い。あなたが誠実に接してきた方々は、あなたのファンであり、最強のサポーターです。
60歳からの起業は、ゼロからのスタートではありません。これまでの人生で培った「あなたという人間への信頼」を土台に、ゆっくりと種をまいていけばいいのです。大丈夫。あなたの頑張りを見ていた人は、必ずどこかにいます。
キャリアの転機に立ち止まっている方へ。
「これからどう働けばいい?」という漠然とした不安も、キャリア理論で整理すると進むべき道が見えてきます。キャリアコンサルタントとして「心と頭の整理」のお手伝いをしています。
本記事は、連載『60歳からの欲張りすぎない起業術』の第3回です。
10年のサロン経営を経て、67歳で専門家としての武器を手にするまでの歩みを、キャリア理論で紐解きながら綴ります。
現在進行中のテーマ:
パート1:手放す勇気と、空白の価値(第1回〜4回) ← 今ここ!
パート2:偶然を「仕事」に変えるしなやかさ(第5回〜8回)
パート3:自分を使い切らない、新しい黄金比(第9回〜12回)
▶ 連載の一覧(目次・プロフィール)はこちら
最新情報は、LINE公式でお知らせ

